2012年12月30日日曜日

小数のたし算もひき算も考え方は同じ

今年もあと2日となりました。雪国の大雪も一段落し、今日は小雨。
さて、2学期の算数授業を振り返っての投稿です。
 
学習指導研修会の公開授業で、位のちがう分数のたし算を学習しました。どうして、小数点を揃えるのかということを、0.01が何個分かという考え方で説明しました。(11月28日投稿参照)
 
 
さて、この授業の翌日、小数の引き算を学習しました。その時の学び合いでは、たし算の時の0.01が何個分かという方法は、しっかり身についており、難なく解決し計算することができました。
 
 
 
 
この授業をしてみて、2011年2月18日の投稿http://vaio0819.blogspot.jp/2011/02/blog-post_18.html を思い出しました。3年分数のたし算の授業でしたが、この時は「考える足場を与える」という流れで実践しました。小数のたし算(単位小数が何個分)ということを足場にして、分数のたし算を説明させる授業です。
 
 
今の学び合いの流れではないのですが、この時の記事にこんなことを書いていました。
 
(ここから)
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そして、1/5+2/5という問題。これをみんなで考えました。小数の考えを足場にして、スムーズに答えが出て、説明も簡単にできました。もちろん、分母を足す考えの子供は、一人もいません。

 次に、同分母分数のひき算を自力解決させました。教科書では、次時での扱いです。どうして、本時で扱ったか。それは、小数でも分数でも整数の考え方を用いれば、かんたんに計算できるということが理解できれは、あとは引き算も同じという考えからです。

 案の定、引き算を自力でやったのですが、ほとんど全員が説明つきで簡単に計算できました。(足場の力だな・・)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(略)
 今回の授業では、数の共通性に目を向けた類推的思考をさせるのに有効であるということです。類推的思考は、数学的な考え方を育てるのに重要な要素になります。

 分母を足す誤答を出させることで、思考を促すという考えもあると思いますが、数の共通性を見出し、足し算でも引き算でも同じという数の広がりを学ばせる絶好のチャンスだったわけです。さらには、かけ算や割り算をやってみたいという子供たちからの声!発展的な学習にもつながるということなのですね。
(ここまで)

ということで、たし算と引き算の両方を扱ったところ、子供たちは難なく解決していました。考え方さえきちんと理解できれば、あとは数の共通性という点から、演算が違っても同じ考え方であると捉えさせるのは簡単なことです。

今回の授業でも、石田先生から
「主問題2では、引き算をしてみたら?」
というアドバイスをいただきました。(今回は学習指導研ということで、やりませんでしたが・・)

単元を終わってみると、たし算と引き算の両方をやってもできたのかなと思いました。どの教科書でも別々に扱っています。でも、単位小数などの説明がきちんとできれば、加減計算のハードルはなくなります。このことが、次のかけ算わり算に生かされるはずです。3学期、かけ算わり算をやります。さて、この考え方を想起して問題を解決できるか。学び合いによる考える足場の指導法のよさが発揮されることと思います。

2012年12月28日金曜日

学び合いで足場をつくる算数指導を広めるために

学期末の激務も一段落。この2学期は、対外的な研修会での公開授業3回させていただき、自分なりに学んだことがたくさんありました。3回も見ていただくと、子供たちが意欲的に学ぶようになりました。

成果として、算数が得意な子供は、さらにわかりやすい説明をしようとする姿が見られたことです。さらに、苦手だった子供の目が輝いてきたことです。今までは受身だった学習も、仲間と積極的に関わることで自ら質問したり、気づきを発表したりできるようになりました。

わからない子供には、個別に指導すれば理解できるようになるということで、全国的にTTという指導形態を取り入れていますが、個別に指導しても教えてくれる先生にたよろうとする意識は変わりません。

しかし、仲間と学び合いながら問題を解くという活動は、人間本来の学びたい、知りたいという脳の働きを目覚めさせるのではないかと考えています。これが、「教え込み」と「教えて学ばせる」ことの違いです。ということで、この学び合う姿を追究してきたことが、この2学期の大きな成果です。

他校だけでなく、本校の先生方にも参観していただきました。授業を見て、学び合う授業を実践しようと試みてくださった先生が増えてきました。それに伴って、
「グループでの学び合いは、どう指導していけばよいのでしょうか。」
と、反省職員会議の意見として書いてくださった先生もいました。先生方にも火がついてきました。

授業としての提案を行なったので、次は全校に学び合いによる考える足場のよさを、全校に広めていくべきだと思いました。そこで、以下のことを実行することにしました。

1 ホワイトボードを全クラスに設置する。(年内に完了しました)
2 本校の学び合いのしかたを明記し、授業を見せ合う。(3学期)

 
 
というわけで、自ら冬休みの課題として、「学び合い」の資料を作成することに決めました。参考にするものとして、
 
〇「学び合い」のある算数授業(石田淳一先生著;明治図書)
〇10月に行われた公開授業の時の、石田先生の講演(プレゼン)
〇本校若手のホープが作成した「グループ学習の進め方」というマニュアル
〇10年前に勤務していた時の、自分が作成した複式指導の発表資料
〇今年度、学校研究を発表した市内小規模学校の資料
 
以上の資料を使って学び合いのマニュアルを作成してみたいと思います。冬休みは、長いようであっという間です。子供たちに力をつけるために、または先生方の授業力アップのためにがんばろうと思います。

2012年12月8日土曜日

渋谷区T小学校の公開研究会から学ぶコト

言語活動の重要性を追究してきて,8ヶ月が過ぎようとしています.本校の今年度の研究は国語科に絞られ,まずは「言語活動」とは何かを教員全体で理解することに重きが置かれています.

そんな中,本日,東京都の小学校にて開催された公開研究会に参加する機会がありました.テーマは「言語活動の充実」です.国語科はもちろんのこと,本年度は算数と理科にも幅を広げて,言語活動を追究してきたとのことです.

事後の研究会にて,文部科学省の水戸部先生,笠井先生,教育政策研究所の角屋先生らのパネルディスカッションがありました.そこで,いくつかの示唆に富んだ提言がなされました.

○角屋先生(理科)
「言語活動=話し合いや説明をしなければならない」という強迫観念にも似た図式が完成されていないか.言語活動をさせることが大切なのではなく,「どんな力がつけたいのか」が優先されるべきである.つけたい力と,説明,話し合いが関係していなければ,何の意味も持たない.「目的に会わせて的確に表現すること」の重要性.自分の考えを持つには「何を手がかりにして考えを持つべきなのか,足場を明確にして,考える手がかりをしっかりと与えてあげなくては,思考力は育たない」 .「自力で書かせ,話し合いをさせれば力が伸びる」というのはどこまで,本当なのか.日常にそれが蔓延していないか.
「モデル」と「自分」を比べて,「何が違う?」と問いかけ,比較検討力を伸ばす.既有の経験,知識を生かして,類推的に思考する→類推したものと実際を比較する.中途半端な見通しで「自力で解け」と投げかけてもしょうがない→足場を等しくした上で・・類推,比較していく力が,言語活動の充実に向けて大切だ.

○水戸部先生(国語)
言語活動充実の要として「国語科」がある.これまで「段落毎,場面毎に丁寧に読み進める」ことが,どの子どもにも優位に作用し,じっくりと覚えることができると言われてきた.しかし一方で,子どもの思考や興味の広がりを「これまでの国語科の学習指導」が阻害していた可能性は否定できない
これからの国語の言語活動は,「単元を貫いたシンプルなねらいを明確化」「子どもが主体者となり,単元のスキームが描く方向・ゴール像を教師/子どもが意共有した学習活動の設定」「子どもの必要感を大切にした指導の重視(交流させるために,グループ活動を取り入れるのは教師の都合.そこに子どもが必要感を持っていなければならない)」「膨大な資料の中から情報を取り出し作り上げていく力」「言語活動を通して作り上げたものをoutputする機会(自分達が取り組む言語活動の目的意識を明確にする)」が重要だ.そして,何より学力観の転換(パラダイムシフト)が教師に必要.「言語活動は授業時数を長くかけてしまう?→ここでは何を教えるか→精選」「言語活動を設定すると個人差が出て指導が大変?→これまでの教師主導の指導が故に個人差が表出しにくかった.個人差が表出することは指導のチャンスだ」.
目の前の子どもに付けたい力は何か.根本を問いたい.教科書の問い,答えを教師とともに読み進める力をつけたいのか.主体的な学びを追究する子どもを育てたいのか.我々が 今こそその問いに応え.一歩,半歩でも前にでたい

○笠井先生(算数)
算数科の言語活動では,「考えを表現する→伝える→考えを深める」流れが必要.表現の手段は「図や絵,グラフ,式」等である.しかし,表現したことを「伝える」には,「伝える意味」を持たせなければならない.「伝える」という学習活動の主体は,「伝える本人」「伝えられている他者」なのである.「児童相互の関わり合い」を重視した言語活動を設定すれば,「算数科の思考・判断・表現力が育つ」というのは,十分条件にはならないのである.「友達と話し合ったから,新しく知れたな.よかったな」という話し合いの有用感,満足感が前提になければ,どんな言語活動も意味をなさない.クラスみんながわかることができればいいな,というクラスの土壌を作り 「友達の理解に応じて,友達に自分の考えを説明したり,納得したりできる子ども」の育成を目指したい.また,数学的に表現し,考えを深めさせるためにも,一人一人の実態に応じて,表現の手段に多様性を与えたい.
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「算数の考える足場」の授業報告からはほど遠くなりましたが,以上の提言を「足場」の授業に当てはめていくと,いくつかの共通事項が浮かび上がります.
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【足場の授業のスキーム】・・合っていますか?
⑴問題①提示(問題との出会い)
☞子どもの興味関心にそった課題提示
⑵ めあての確認
☞教師と子どもが,ゴールを共有
⑶見通し
既習(足場)を生かして類推する力をみんなで共有する(得意な子は,説明を通して,わかってほしいという願い⇆苦手な子は,説明を何とか聞き入れて,気付いてやろうという願いのシンクロ)
⑷協同解決(グループ学習)
☞みんなでわかろう,みんなで達成しようというクラスの風土.個人の考えを持ち合い,多様な考えを認め,融合させる(図,絵,式,説明).目的意識の高いグループ活動の展開.
⑸全体共有
考えを伝える.傾聴する力を通して,多様な考えを知る.
⑹ 問題②提示
協同解決した問題を手がかりとして,解法を類推し,自力解決を図る
⑺適応題/まとめ
みんなで解いてわかったことをまとめると共に,学習のゴールに向かうために大切だったことを板書の記述などを基に考え,まとめる.
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このように,今日お聞きした言語活動全体で大切なことの一端が「足場の授業」にはちりばめられています.これまでの「課題解決型授業にも,そのようなポイントはみられたのではないか」という疑問への問いはわかりません.しかし,確実なのは「世界や日本を背負う人材を育成するために必要とされる課題発見力,解決力,表現思考力,協同性」の伸長を「足場の授業スキームは確実に保証している」ということです.今,知識基盤社会という社会の変化に伴って学力観の転換(パラダイムシフト)が教師に求められているのです.教師も,社会が求める人材像を今一度再考し,その育成のために必要な情報を収集/選択する力が求められていると改めて感じました.言語活動の充実,そして足場の授業の充実のためにも,自身の創造的かつ確実な実践を,ベテラン先生も若手もoutputしていければ楽しいですね.









2012年12月3日月曜日

新採研から学ぶ ~ 考える足場の有効性 ~



 
11月29日新採研にて,I先生による3年算数「分数」の授業がありました。本時は,単位分数をもとにして,同分母の真分数どうしの加法計算の仕方を考えさせるという内容でした。
 
 考える足場として,3/8と5/8の大小比較です。この時の説明として必要なことは,1/8が3こ分と1/8が5つ分という見方です。このことを使えば,本時の問題である,「1/+/5」の説明ができるということです。
 
① 今回の授業では,足場を与えるが,主問題1を自力解決させるというものです。自力解決では,単位分数のいくつ分かという説明と,液量図での説明が出されました。
【板書より】
 <説明1(単位分数のいくつ分)>          <説明2(図)>
 まず 1/5は,1/5が1こ分                   1/5の液量図
 次に 2/5は,1/5が2こ分                   2/5の液量図
だから 1/+/5は,/5が(2+1)は3          3/5の駅量図
                               ↓
「1/+/5は,1/5が(2+1)こ分で3/5」と板書したい!
 
それぞれの発表(説明)をさせたあと,I先生は「どちらも同じだね。」ということを確認しました。算数の学び合いでは,共通点や相違点を考えさせることが大切になります図で説明をする時に単位分数のいくつ分かという説明が使えることに気づかせたいですね。板書では,上の図のようにして説明と図をリンクさせながら共通点を見いだすことで,それぞれの説明のよさを感じながら,より深い理解につながると思います。
 
② 「1/+/5は,1/5が(2+1)こ分で3/5」という説明を,主問題2に入る前にペアや全体で声を出して説明し合うなど,しっかり書けるように,また言えるように定着させることが大切です。
 単位量のいくつ分という見方は,他学年の計算でもたくさん出てきます。
【低学年】  20+30    ・・・だから,20+30は,10の(2+3)こ分で50
       200+300  ・・・だから,200+300は,100の(2+3)こ分で500
 
【中学年】  1.+.25     ・・・だから,1.4+3.5は,0.01の(140+325)こ分で4.65
【高学年】  小数,分数のかけ算,わり算へというように,10進法が拡張していく思考が身につきます。       ⇒帰納的思考・演繹的思考・類推的思考へとつながっていく
 
 本時の考える足場が子どもたちの説明に生かされていたということで,足場が有効であったと考えられます。
 
③ 他校で同内容の研究授業を課題解決型で行った実践があり,話題になったそうです。その課題解決型の授業では,いろいろな説明があったが,「○の(□+△)こ分」という内容はなかったということ,多様な考えを比較検討する時間が長く評価問題(練習問題)までいかなかったことなどを考えると,今回の授業では,意図する説明ができ評価問題もできたということから,考える足場の焦点化した思考や効率性が有効であったということが言えるでしょう。