2012年3月17日土曜日

そろばんの足場って?

だいぶ春めいてきましたが、いかがお過ごしでしょうか。

さて、3年生算数の最後の単元に、「そろばん」があります。そろばんは、私が小学生の頃からありました。(当たり前)昔のそろばんの授業では、先生が計算できるまで教えてくれました。その頃、珠算の塾に通っていた私は先生に、「終わったら遊んでいていいよ」と言われ、すぐに終わらせて校庭で遊んでいた記憶があります。
そんな懐かしいそろばんの授業を自分がすることになりました。クラスにやはり自分のように珠算の塾に通っている子供がいました。その子は、普段の計算でもクラス1速く、もしかしたら自分よりも速いかも・・と思えるほどでした。私は、その子を『ミニティーチャー』として、苦手な子供へ教えてもらうことにしました。

3年のそろばんは2時間扱いで、とても計算できるまでにはできないだろうと思いました。そんな時、「そろばんの足場って何だろう?」という疑問がありました。普段の算数は、既習事項や技能など、いろいろと足場として活用でき、成果が上がりましたが、そろばんは、子供たちにとって初めての体験です。ただ教えこみしかないだろうと思っていました。

最初は、1珠や5珠、定位点などを教え、数のおき方、払い方を指導しました。そして、1桁のたし算、4+3の計算の仕方を考えました。自分では、自然と動かしている+3ですが、意味をつかませるのに苦労しました。それは、1珠に4この珠があるので、3を入れられないから、どうするかということです。もちろん、5を入れて2を引けば3を加えたことになります。つまり、5の補数を瞬時に引くわけです。これがなかなか難しい。たし算なのに引き算をすることの不思議さが邪魔します。また、繰り上がる時は、10の補数を引いて繰り上げることになります。これらの操作は、何度も何度も違った数字で練習するしかありません。理屈ではなく、「操作」ですね。私も、計算するときに、筆算のようにいちいち考えて計算していません。指が自然と動きます。ピアノと同じなんでしょうか。

しかし、自然と動くようになる前に、どうしてそういう操作なのかを理解させなければなりません。このへんは教えこみだろうと思っていましたが、たとえば4+3の時に、「5をたして、2を引く」ということが、5珠しかないということから子供たちが気づきました。つまり、5珠を使う時は、5の補数、繰り上がるときは10の補数を足場にすればいいわけです。そう言えば、10の補数については、1年生の繰り上がりのたし算や繰り下がりの引き算をする時に唱えさせます。そろばんでも、補数という既習を使って操作させるわけです。だから、足場は「補数」を考えさせればいいと思いました。

そろばんは、単に置き方や払い方を教えていけばいいというものではなく、補数をすぐに想起させ、それを操作に変えるということを指導していくのだと改めて感じさせられました。そういう操作で計算することが、数の仕組みやよさを自ら感じとらせることに有効なのだと思います。指の動きも、ピアノなどの楽器の演奏と同じように、細かい指先の動きが、右脳(左脳だっけ?)に刺激を与え、活性化させているのではないでしょうか。

電卓やパソコンがこれほど普及している世の中ですが、今だにそろばんが残っているのは、そういう理由なのかなと自分なりにとらえています。算数で2時間程度やってもなかなか身につきませんが、十進位取り記数法を基本としている整数の仕組みの理解を深めるには、そろばんを教えることでも一役担っているのかと思います。昔は、そろばんを全員に購入させていましたが、今は学校のを使います。家にある人は、ちょっとでも興味を持って数字を置いてみて欲しいと思いました。