2014年7月12日土曜日

複式指導は、『学び合い』の原点

台風一過で、全国的に暑い一日となりました。

先週、附属小学校の公開授業を拝見致させていただきました。

3・4年複式と6年の算数です。今回は、コメンテーターとして参加しました。4,5人のコメンテーターの先生方のご意見を聞いて、「なるほど」と思うことがたくさんありました。まだまだ私も勉強しなければいけません。

今回の授業のことは事後研で語られましたが、自分なりに一番考えさせられたことは、複式の間接指導のことです。

今回は、3年生のコメンテーターということで、3年生の間接指導を中心に拝見しました。学習のリーダー(ミニティーチャー)が進行して学び合っていました。とても素晴らしい進行の仕方で、4月からの学習訓練の賜物です。

複式の間接指導時には、教師は別の学年に直接指導をしています。つまり、先生はいません。自分たちで学ぶわけです。

この複式指導は、私が新規採用の時に3年間、その後次の学校でも数年間複式学級を担当しました。ほとんど毎日のように学習プリントを準備して授業に臨みました。しかも、2学年分の学習プリントを作るわけですから、教科書と指導書など2学年分を家に持ち帰り、ひたすらプリントづくりに明け暮れた記憶があります。

そんな時、ふと気づいたことがありました。
「自分が作っている学習プリントは、『自習プリント』ではないのか。」
つまり、先生がいなくても、自分でどんどん問題を解き進むことができるプリントをつくっていることに気が付きました。

複式の間接指導では、教師がいないから自分たちだけで学習しなければなりません。しかし、これはデメリットではなく、自分たちで自ら学習を進めるためのチャンスであると思いました。

つまり、学習訓練を積めば、自分たちで学び合うことができるはずです。そう思ってからは、少しずつ自分たちで学び合うことができるように訓練していきました。そしたら、教師がいなくても、どんどん学習を進められるようになってきました。

さすがに数学的な価値に迫る場面では教師の力が必要ですが、その前までの学習ができるようになりました。

複式指導から離れてから、ずっと大規模校勤務が続きました。人数が多くても、すべて直接指導ができる単式学級のよさを噛みしめながら指導してきましたが、今回、久しぶりに複式指導を拝見し、「今の『学び合い』の原点がここにある。」
ということを気付きました。

つまり、条件や問題を提示しただけで、全員に既習との関連から気付きを言わせるとか、友達の考えをつなぐことなどは、複式の間接指導と同じ方向性ではないでしょうか。

というわけで、今回の付属小さんの授業を拝見して、ずっと前の自分が目指していたことが、今も続いていることを実感させていただきました。過去の経験を生かしながら、「学び合い」をさらに充実させていきたいと思いました。

附属小の先生方、そしてコメンテーターの先生方、本当にありがとうございました。




2014年7月5日土曜日

「学び合い」シリーズ 新刊のご紹介

いよいよ新刊が7月中旬に出ます。石川県の学び合い先進校の事例をもとに、「学び合い」の授業実践をまとめたものだそうです。昨年度、それらの学校に視察に行ってきました。さっそく購入予約しました。皆さんもどうですか。

http://www.meijitosho.co.jp/detail/4-18-162410-1

2014年6月29日日曜日

自分たちで反比例のきまりを見つけさせる学び合い

比例の学習が終わり、反比例の1教時目。

昨年、石川県小松市立苗代小学校で授業をさせていただいた時の授業です。
いきなりのグラフ提示ではなく、
T「面積が24㎠の長方形って、どんな長方形ですか?」
という発問をしました。

この発問では、何を答えるのかわからない児童がいましたが、
C「たて6㎝、横4㎝の長方形です。」という発言をきっかけに、板書の通りいろいろな長さが出されました。

『意見をつなぐ』ことを、今年度の目玉としているので、いろいろな気づきが出されました。
たてと横を逆にしてもよいこと、5㎝や7㎝の時は小数になること、1㎝から24㎝までの範囲ではなく、0.1などの小さい数でもよいこと、そのことから240㎝の場合もあることなど、意見をつなぐ場面が見られました。


さて、その結果を表にまとめてみると、何かきまりがありそうということになり、本時のめあては、
「きまりを見つけよう」となりました。

ここで見通しです。何をどう見ればよいのか。その時に比例の場合を想起させ、たての見方と横の見方をすれば、きまりが見つかりそうだということになり、グループ学習開始!

それぞれのチームで決まりを見つけ出しました。


全体の学び合いの場です。

子どもたち自ら自分たちのチームと近い考えを、黒板にはる時にグループ化させます。
このグループは、横に見て、
「一方の数が2倍、3倍、4倍になると、もう一方の数は、÷2、÷3、÷4になります。」という表現です。
 
こちらのグループは、÷でなく分数倍という見方です。
 
どちらでも同じきまりですが、子供たちは上も「×」だから、同じ「×」の方が考えやすいという話し合いの結論になりました。逆数倍になっていることには触れませんでしたが、既習をもとにしているわけですね。
 
 
どのチームも横のきまりを見つけ出しました。たてのきまりは、4つのチームが見つけ出していました。
 
『一方の値×もう一方の値=きまった数』ということですが、ここで「たて×横=面積」という既習と関連させることができるかということです。つまり、4年生で習った長方形の面積の公式が、反比例の式につながっているという数学的な考え方を身につけることが重要だと思います。
 
そして、y=24÷xにつながるわけです。
 
反比例は、教えれば10分で理解できると思います。でも、自らきまりを見つけて、既習と関連付けることが大切だと思います。それが、この「学び合い」から実現できます。
 
 
 

2014年6月18日水曜日

数直線図・関係図の誤答から学ぶ


 割合の問題が分数である時、子供たちはイメージするのが難しいですよね。そのために数直線図や関係図をかき、それを手掛かりに立式するわけです。

ここでのつまずきを考えると、もとにする量(1にあたる数)がどれなのかでわからないということや、図はかけていても立式の段階で演算を間違えてしまうことであろうと想定していましたが、全くその通りの誤答が出されました。



チームIは、数直前図から関係を見いだしました。1に何をかけると2/3になるのかを考えればすぐにわかります。

このチームは、1に2/3をかけるのか、2/3で割るのかで迷っていました。ここでの支援は、
「実際に計算してみたらどう?」

左上の計算が、確認の計算です。これで自信をつけて、かけ算であることをつかみました。(下写真)



チームHは、逆の考え方で、2/3に逆数をかければ1になる。だから、□に3/2をかけるという発想です。つまり、□を使った式を立てて、□を求めるというやり方です。時間切れで答えを求めることができませんでしたが、図と立式が正しい例ですね。



以下、間違いの例
チームA;数直線図は正しくかけたが、図からの立式で間違えた例



チームF;関係図(かけわり図)に入れる数値の位置を間違ってしまった例
(もとにする量と割合を取り違えてしまったのでしょう)


 チームE;チームAと同様の間違い

 
 
 数直線図や線分図、関係図を正しくかかせることは、とても大事な指導になります。2,3年生ぐらいからしっかりかけるようにする指導が必要です。
 
全体の学び合いでは、どれが正しいかの検討をしました。ここでの学び合いにより、自分たちのチームの間違いに気づくことができました。
 
間違えたチームの間違いを指摘(説明)するということも、とても大事な力になります。間違ったチームは、なぜ間違ったのかを説明できるようにさせています。
 
間違いから学ぶことは、算数ではとても大事なことですね。
 
 

2014年6月7日土曜日

整数に直してイメージ化を図る

梅雨入りとなりましたね。肌寒い日もありますので、風邪などひかぬようお気を付けください。

さて、分数のかけ算・わり算の単元

「AはBの何倍でしょう」という問題です。「~倍」という文字から、かけ算かな?と思う人もいます。
わり算だと思うけど、どっち割るどっちかがわからない、という疑問が多いように思います。



数直線図では、整数と違い、分数表記が難しくなります。
写真上のように、くらべる量ともとにする量がどっちかがわかれば、割合の公式にあてはめることができます。

板書のように、「い」がくらべる量で、「あ」がもとにする量という見通しが、Mさんから出されました。ところが、T「どうして「い」がくらべる量?」と問うと、説明できる人がいませんでした。このままグループ学習をしても、ほとんどのチームができないと思いました。

そしたら、そのMさんが、5年生の時の学習を説明しました。

AはBの何パーセントでしょうという割合の問題では、3年の時に学習したことを使えば簡単にわかるという説明です。

「6は2の3倍を考えればいいのです。3は6÷2だから、それにあてはめて考えます。」という説明。
5年生の時、この辺が結構誤答が多く、
「6は2の6÷2倍を覚えていれば簡単だよ。」と言ったことを思い出しました。このMさんは、常に既習を振り返ることができ、新しい考え方に対しても既習との関連づけが得意です。やはり、算数は習ったことを想起できれば、必ず解くことができるということですね。

さて、見通しは、割合の考え方と、数直線で説明すること、このMさんの考え方(整数と関連付けて)という3つの方法が出されました。

 
そうは言っても、やはり数直線図での表記は結構難しかったようです。(チームFとH)
チームC、Gは、比べる量ともとにする量で考えていましたが、「あ」をもとにしているという説明がなかなかできなかったようです。見通しで出されたとおりに計算すれば、この授業は10分ぐらいで終わってしまいます。どうして、「あ」がもとにしている量なのかという説明が、図などで説明しなければなりません。しかし、分数は整数のようになかなかイメージできない量なので、図で示しても説明できないわけです。たとえば、チームHは、どちらが1なのかがわかりませんでした。これを関係図で考えるにしても、どっちを1にすればよいかわからないことと同じですね。
 
チームI、E、B、Dは、例の「6は2の6÷2倍」という整数の考えにあてはめていました。やはりこれが一番とらえやすいようです。
 
算数では、学年が進むにつれてどんどん抽象化してきます。図で表すことも困難になります。
 
たとえば、「Amの棒があります。重さはB㎏ありました。1mあたりの重さは何㎏でしょう。」(または、1㎏あたり何mでしょう)←( )の問題は少ないかもしれません・・・
A÷Bか、B÷Aかという見極めは、抽象化された数字や文字では見当がつかなくなります。
 
でも、これを「2mの棒があります。重さは6㎏ありました。1mあたり何㎏でしょう。」にすれば、たちまち図を描いて6÷2=3mと全員が求められます。
 
これと同じであるという数学的な見通しを立てられるように教えていかなくてはならないと感じた授業でした。
 

2014年5月28日水曜日

投稿実践例;4年「式とその計算の順序」

今日は30度を超える夏日になりました。今日から数日、30度前後の気温だそうですね。
さて、横浜国大の石田淳一先生がご指導していらっしゃる小学校が全国にありますが、最近、そのうちの小学校で授業研があり、石田先生がご指導なさったそうです。授業者の先生から、投稿の許可を得ましたので、掲載したいと思います。


(ここから)


この実践は、今年度の全国学力調査の算数B問題をもとに、4年生の「式とその計算の順じょ」の発展問題として行いました。石田先生も来校されて、参観されました。
まず、「□の中にいろいろな数を入れて、「37×□」の計算をしましょう。」
と問題を提示し、気づきを発言させました。聴き方指導の成果で児童は次々につながる発言をすることができました。その中で、かける数が3とびの時に積に同じ数が並ぶというきまりを見つけました。
次に、「なぜかける数が6のときに積に同じ数が並ぶのか」を次のさとしさんの式の読み取りを行うことでグループ解決しました。
37×6=37×(3×2)
    =(37×3)×2
    =111×2
    =222
最初は、なかなか考えがまとまらなかったのですが、石田先生に耳打ちされた発問「どうして、37×3=111をつくるとよいのか?」を言った途端、つながる発言が次々と生まれました。教師の切り返しの発問の大切さを改めて感じました。
最後に、適用問題として「37×24の積が888になることを説明しましょう」の問題を解きました。ほとんどの子がさとしさんの説明から類推して、解くことができていました。

授業後の石田先生のご助言をまとめると、
○全体としてはいい授業
○児童の発言がうまくつながっている場面が見られた
○児童の発言がねらいからそれた時は、教師がうまく軌道修正していた(教師の役割として大切)
○最初からグループの形で進めていたので、児童が自然に相談する姿が見られた。
○グループ活動を適宜入れていたのでよかった。
●かけ算を「6を2と3に分ける」という表現は算数的におかしい。かけ算の場合は「と考える」や「変身させる」という表現の方が望ましい。

といったものでした。

(ここまで)

いかに意見をつなぐことができるかということですね。でも、子どもたちだけでつなぐことができない時もあります。そんな時は、教師の出番です。時には戻して考えさせたり、止めたりしながら考えさせる場面をつくることですね。そういうことがうまくいった授業だと推察いたします。

石田先生には、何度も授業をご指導いただいているのですが、一言で「考えをつなぐ」ということの難しさを感じることがあります。しかし、石田先生からのご指導や、著書を拝読していると、少しずつ見えてきます。数学的な価値にせまるための発問ということを常に念頭に置いて授業を進めることが大切だと考えています。本校も、今年度は「考えをつなぐ学び合い」がキーワードになっています。7月の授業研では、考えをつなぐ学び合いをさせるための発問を考えていきたいと思います。

最後に、よい実践がありましたら、ぜひご投稿してください。ネットで勉強会をしましょう!

2014年5月4日日曜日

算数を学び合う授業とは(新算研5月号)

みなさん、楽しい連休をお過ごしのことと思います。

さて、東洋館出版の新しい算数研究5月号に、先日の取材内容が掲載されました。



テーマは、「算数を学び合う授業とは」です。
石川県の神田先生と私が提案者で、文科省教科書調査官の笠井先生や学び合い指導の先駆者である横国大の石田先生を始め、新算研の校長先生方がメンバーです。




今回の話し合いでは、やはり学び合いの場での教師のコーディネート力がカギであるということでしょう。



昨年度の公開研の授業を提案してきましたが、まだまだ未熟であることを感じました。学び合いで、いかにして算数的な価値に迫らせるか!そして、その価値のよさが実感できる授業を目指すべきであることを再認識しました。



詳しい内容は、ぜひ購入して読んでいただきたいと思います。うちの学校でも、「学び合い」がキーワードになっています。

学び合いは、ずっと前からいろいろな学校で研究されてきましたが、形だけに終わってしまっている学び合いが多いように感じてきました。

石田先生が提案している「協同学習」を基本とした学び合いを実践してきましたが、子供たちがどんどん変わってくる様子が見られました。それだけでなく、学力テストでも、1年で4~5ポイント上がりました。

みんなで学び合う「協同学習」で、学力は上がります。子供たちの意欲も高まります。説明の仕方も上手になり、算数が好きになります。先生方に、このよさを知っていただくためにがんばります。