2011年11月30日水曜日

「与える足場」から「つくる足場」へ

今日は、分数のひき算でした。昨年度の実践では、主問題1(全体解決)でたし算をやって、同じ考え方を使って、主問題2で引き算をやってみたところ、何の抵抗もなくねらいに到達できました。

しかし、今回は3年であることと、昨年度の4年のように分数の意味がしっかりと理解できていない実態などから、教科書通りに、たし算と引き算を分けてしどうすることにしました。

今回の取り組みは、「与える足場」から「つくる足場」への移行です。春から足場の形で慣れてきた子供たち。足し算で十分に「○の何個分」という見方考え方をさせてきたので、つくる足場でもやっていけるだろうと考えました。結果は、以下の通りでした。
板書をご覧ください。左にある考える足場(ステップ)には、本時に説明させたい内容の足場がありません。あるのは、たし算と同じところ、違うところという板書だけです。

1/5をもとにして考えること、たし算が引き算になることが、子供たち自ら気づきました。このことを足場にして、主問題1を説明させたところ、実にスムーズに説明することができました。全体解決をするまでもなく、自力解決でも抵抗なくできる様子でしたが、全員に確実に説明させたかったことから、みんなで話し合いをしました。

ここで、あることを取り上げてみました。それは、自主学習で、予習をしてきた女の子のノートに、(4ー2)個分でなく、(4+2)個分と書いていたので、この誤答を使おうと思ったのでした。

「予習では、昨日と同じように+だと思っていたんですが、引き算だから4ー2だとわかりました。」
と発言した時、周りの子供たちから自然と拍手が起こりました。

「間違いは宝だ!」と常日頃から言っていたからだと思います。

「今度から自分たちでステップを作ってみたい。」という子供たちの声。もちろん、全員ではないが、確実に既習の考えに目を向けて問題を解くという思考の流れが身についてきています。

<「つくる足場」の実践をしてみて感じたこと>

・自ら考えよう、説明しようという意欲が高まる。
・既習を元に考えようという数学的な見方考え方が身につく。
・整数をもとにして考えることの大切さを知る。
・説明の仕方が、さらに身につく。
・もっといろいろな計算をしてみたいという発展的に考えようとする。
・いろいろな違う数字でも説明してみたいという意欲が見られる。

「考える足場」の指導は、最終的には子供たち自ら問題の系統性に気づき、それらを利用して解決できるようになっていくのだと確信しました。

2011年11月29日火曜日

分数のたし算の足場、整数でも有効!

初雪から寒さも一段落という感じですね。
さて、今日は3年の分数のたし算でした。昨年度も、3・4年の担任団で授業を見せ合いしながら、研修を深めたところなので、ここは一つ、昨年度の通り(ことしの2月のブログ参照)の授業をしてみることにしました。

しかし、問題がひとつ。昨年度は、小数を既習として足場にしましたが、今年の教科書は、小数が分数のあとということで、小数は使えないことに気づきました。

授業の前に、大事にしたいと思ったことは、とにかく、単位分数のいくつ分かをすぐに言えるようにしておくこと。そのためには、前時までにその思考の流れを作っておくことにしました。

(前時の板書です)
単位分数がいくつ分になるかをしっかりと捉えさせておきます。3年生は、まだまだ分母や分子の意味を捉えられない子供もいましたが、徹底的にこのことをおさえました。

次に、どんな足場を与えるかということです。小数が使えないとなれば、整数しかないと考えました。

(本時の板書です)


100+200=300

低学年でもわかるこんな単純なたし算の意味づけを足場にしました。100をもとに考えさせて、説明させるのです。

100は100が1こ分、200は100が2こ分 だから100+200は100が(1+2)こぶんで300

100円玉が何個になるかと考えさせると、1+2の計算になるという単純な考えで説明させます。
これを足場にして、分数の問題を提示したところ、子供たちは、単位分数のいくつ分かというところを、1+2で考えればよいことにすぐに気がつき、足場の説明と同じであることがわかると、全体解決を待たずに、自力解決できそうな状況でしたが、あえて、液量図で確認させてから、説明させました。足場のおかげで、簡単に説明することができました。

次に、自力解決。これも、足場と主問題1の説明により、全員が説明を書くことができました。しかも練習問題とドリルの問題すべて全員が正答を得ました。

『分母を足さずに、分子だけの足し算をすればよい』

これだけのことを教えるのは、簡単です。どんな教え方をしても、きまりさえ理解させれば、計算問題は正答が出せます。

しかし、なぜ分母を足さないかという素朴な疑問を無視して進めることになります。この授業では、子供たち自らこの疑問を持ち、自らそれに説明することで答えていくという流れができました。それは、整数のたし算を足場にして説明させたことで、分数のたし算という未習の内容を簡単に説明できました。

「1/5が(1+2)こ分という説明がしっかりと理解できた子供たちからは、なぜ分母を足さないのかという理由をしっかりとつかんでいました。

計算の答えが正確に求められたということだけでなく、考え方がしっかりと定着できた足場の授業になりました。

明日のひき算の授業は、たし算を足場にして進めてもいいのですが、ここはあえて、子供たち自ら足場を作り出す授業に挑戦してみたいと思います。日々、このような実践を積んでいけば、一人一人に数学的な考え方が身についていくのでしょうね。

2011年11月21日月曜日

自分なりに足場!


小数のたし算の授業について「足場」の考え方?を使って挑戦してみました。

 「問題1」では,既習事項の小数のたし算でポイントを整理しながら解いてみました。
解いた問題は,隣の席の友達と「①解き方のポイント②解き方の流れ」について,確認の意味で説明をし合うようにさせました。

「問題2」では,小数の桁数が異なる問題でした。
この問題は「自分一人で解ける?迷ったときのヒントは黒板で確認しようね。」とだけ言い,自力で解かせました。一般的なミスとして,正答隣に板書した整数同士のたし算と同様の解き方となってしまう場合があるかと思います。しかし,問題が簡単なのか,既習事項や「問題1」のヒントを生かしたのか,全員が正解する事ができました。

この時,「1.4の隣の小数第2位には,ゼロが隠れている。そう考えると,間違いをしにくい」といった発言がありました。あまり,算数が得意ではない児童でしたが,一生懸命発言してくれました。すると,「なるほど!」という声が上がり,「ゼロをつけるというか,小数点がずれて筆算をたてたら,そもそも意味が通らない」などという声も上がり,意見交流を3分程行う事ができました。

その後,お互いの解き方のポイントと流れをもう一度ペアで確認させた後,適応題を10問程解いて,授業が終わりました。


(成果)
・やはり,習った事を「意図的に生かす(生かさせる) 」ことは,児童への安心感を高めてくれます。不安そうな児童にも,黒板のヒントやさっき,みんなで解いた流れを生かせないかな」と言うと,すっきりした顔で問題を解き始めてくれます。

・教師が系統性を意識せざるを得ない授業になります。普段,なかなかゆっくり授業の準備ができないこともあります。経験のない自分にとって,瞬時に系統性を意識したり,重要ポイントを精選して授業を構築するのは非常に難しいです。しかし,このような「足場」を意識した授業を実施すると「単なる前時の復習」ではなく,時には「算数という教科の単元の系統性 」時には「前時の授業をいかに生かすか」という所に主眼をおかざるをえなくなります。教師自身の思考がポジティブになります。

しかし,様々な解き方がでてくる問題には,どのような「流し方」があるのか。
例えば以前,面積の問題の解き方を足場でやっているのを見ましたが,記憶が薄れてきてしまいました(笑)

また,教えて頂いて,足場を生かした授業のバリエーションを増やしていきたいです。






2011年11月19日土曜日

考える足場の授業のタイプ!

先日、梨郷小学校で資料だけ渡して、説明をしなかったので、この場を借りて説明させていただきます。
自分が足場の実践をしていて思ったのは、下記の①のタイプだけが足場の授業だと思っていました。ある時、「今日の足場は、必要なのかな?」と思ったことが何度かありました。また、単元の終わりごろ、「一人一人みんな説明できるようになったので、あえて足場なしでやってみたい。」などと思うこともありました。

そんな時、石田先生の本を読んでいたら、足場のタイプにはいろいろあるという内容がありました。足場の授業で、子供たちが自ら既習事項と関連付けられるようになったら、主問題1を最初に与えてもよいということです。さらに、どんどん力がついてくると、いきなり問題を提示し、子供たちにいろいろと話し合いをさせながら、まとめていくというタイプもあるということです。(以下、資料と同じ文面です)

1 足場の授業(指導過程のタイプ)はいろいろある
(1)「考える足場」の指導法の3つのタイプを、内容に応じて組み合わせる。
①「教師が足場を与える」または「教師と子どもが一緒につくる」【足場の基本】
足場-主問題1(全体解決)-主問題2(自力解決)-学び合い-まとめ-適用・発展
②「子どもが友だちと相談して足場をつくる」(主問題から入り、友だちと相談して解法の見通しを話し合わせる)
発問例;「この問題を解決するのに、習ったことでどんなことが使えそうですか。」
主問題1(提示)-足場をつくる-主問題1(考える)-主問題2-まとめる
③「子どもがつくる足場」(主問題を1つにしてじっくり考えさせる「任せる」タイプ)
  主問題-まとめる-適用・発展



<単元指導計画> ・単元の導入・前半…① ・単元の展開…② ・単元の終末…③

 
 

(2)理解度の実態によって
  主問題1で定着していない児童が多い場合、主問題2でも全体解決をする。
 
  基本的な考え方は、足場を与えることにより全員が解けるようにしてから自力解決させることであるが、慣れてくると足場をつくれるようになるなど、既習との関連を意識することができる。

 (ここまで)
足場の研究をしていると、基本となる①だけが足場の授業であるかのように思っている場合が多いと思います。自分もそうでした。今回の授業研でも、基本形の授業を見せていただきましたが、②、③の授業に変容していくのが、本来のねらいであると思います。ですから、たとえば単元の最後の方などで、説明する力をどんどん発揮させ、伝え合う力(表現力)を身につけることができるはずです。2年目、3年目は、このような研究の方向性もあるかと思いました。

自分のクラスでも、「今日は、ステップ(足場)なしでいくぞ!」と言うと、既習の説明をしっかり活用できる力が身についてきました。ですから、②のレベルまで到達していると思います。さらに、③のような授業をめざしてがんばっています。これには、公開研で発表したように、「対話力」も必要です。対話もさらにレベルアップしていきたいです。

2011年11月16日水曜日

考える足場の授業研究に参加して

今日は、山形県では初雪が降りました。本格的な冬も目の前。風邪に気をつけて元気に過ごしましょう。

さて、本日は梨郷小学校の授業研究会に参加させていただきました。足場の授業を見られるとあって、参加希望して行きました。

<3年「分数」>
内容は、分数のたし算の授業でした。この授業は、昨年度私も行った授業でした。その時の足場は、小数でした。(今年の2月のブログ参照)

今回の足場は、数直線で単位分数のいくつ分かの表し方を確認するものでした。

そして、主問題1で、2/5+1/5を考えさせるという流れです。主問題でも、数直線で表すということで、単位分数のいくつ分をとらえさせていました。




 この授業のポイントは、もとになる大きさの何個分という見方を重視することだと思います。
20は10が2こ分
30は10が3こ分  20+30は10が(2+3)こ分だから50

0.2は0.1が2個分(以下省略)

2/5は1/5が2個分(以下省略)

つまり、整数の考え方がもとになっているので、小数でも分数でも考え方は同じという見方をさせることになります。この系統性を見出させることが、数学的な見方考え方を育てるのだと思いました。

<5年「割合」>
この授業の主問題は、「定員が150人の電車があります。乗車率は68%でした。乗っているのは何人でしょう。」です。


足場にしていたのは、「定員が150人の電車に、120人乗っています。乗車率は何%でしょう。」という前時の問題を足場にしていました。

もとになる量、くらべる量、割合の3つを区別しながら、ていねいに公式化した授業でした。ワークシートや板書は、スパイラルに足場を振り返ることができるように、とても見やすくなっていました。

ここで考えたいのは、本時の主問題は、既習のどういう内容とつながっているか(系統性)を考えてみると、前時の解き方も、もちろん足場になるわけですが、この問題は、低学年で学習した、「何の何倍はいくら」という考え方と同じです。2の3倍はいくらがという基本的な考え方と同じです。つまり、68%を0.68という既習の見方が基本になっているので、このことを足場とすることが、整数を既習とする考え方をであるということで、数学的な考え方を身につけることにつながってくると思われます。

3年、5年の授業の両方に言えることは、何を足場にするかを考える時、整数の考えと同じところは何かを考えることです。

3年では、10の2つ分は20という、もとになる量のいくつ分かという整数の考え方
5年では、2の(3つ分・3倍)は6という整数の考え方

いずれも、低学年で学んだ整数の考えが、分数や小数、割合などでも同じように使えることを教えることが大切であると思います。

今回の授業で、このようなことを再認識しました。3年生も5年生も、足場だろうが何だろうがとにかく 新しいものを学びたいという意欲あふれる子供たちでした。

梨郷小学校の先生方の事後研での話し合いも、参考になるご意見がたくさん出されていました。授業研究に参加させていただきまして、ありがとうございました。

2011年11月9日水曜日

多様な考えと「考える足場」

今日、南陽市の研修会がありました。個人研究の発表ということで、昨年度、考える足場についての実践発表をさせてもらった研修会でもあります。

参加した分科会の発表で、2年算数の実践がありました。算数的活動を取り入れることで、わかる算数にしようという内容でした。2年生の子供たちは、算数的な活動に慣れ、それを手掛かりに意欲的に解決する姿が想像できました。

その中に、「だいはかせ」(だったと思います)というネーミングで、数理的処理のよさを感得させているということでした。「だ」は誰でも、「い」はいつでも、「は」は速く、「か」は簡単に、「せ」は正確にということで、その頭文字をとったものをネーミングしていました。

数理的な処理のよさという言葉は、もう何年も前からあった言葉で、以前、自分も、黒板の上に「はやい、かんたん、いつでもできる」などという文言を掲示して、多様な考えを練り上げる時に、必ずこの言葉で発問していました。

多様な考えを比較検討するといっても、数理的処理のよさの観点でどれが速くて簡単かという比較検討の話し合いや、いろいろな考えの共通点を見出すことで一般化する話し合いかに分かれるかと思います。算数のよさという広い言葉で言われることもあり、算数指導では欠かせない要素であると思います。

しかし、考える足場の授業では、多様な考えの比較検討というのがとても効率的に行われます。というより、多様な考えが出されない場合が多いと言う方が適切でしょうか。

課題解決学習では、できるだけ多様な考え方を出させ、比較検討することにより、思考力を高め、数学的な考え方を養っていくということが基本です。考える足場の授業では、比較検討をしないのではなく、自力解決する前に比較検討を全体で行うという点で、手法が違います。考える足場を固めた後、主問題1では全体解決になりますが、足場を与えているといるので、この時点で多様な考えはあまり出ることはありません。

多様な考えの比較検討こそが、数理的な処理のよさを感得し、数学的な考え方を養うという考えもありますが、この時、苦手な子供はこの話し合いに参加できません。何を話し合っているのかわからないからです。

この点、考える足場の授業では、説明の仕方や考え方をみんなで共有していくというスタンスで指導しているので、苦手な子供も一人一人が理解できるのです。

では、数理的な処理のよさは味わえないのかという点です。教師から、あえて誤答やつたない考えを提示して比べてみるなどの工夫で、よさを感得することができます。それよりも、足場の授業をしていると、よりよい考えを既習とのつながりで考えるようになるので、自らよさに気づけるようになっていきます。多様な考えの比較検討を否定しているのではなく、より効率的に行うことができるということなのです。足場の授業を実践している先生方、自信を持って実践しましょう!

(つけたし)
今日の研修会でお会いした先生に、「ブログみて参考してます」と言われました。とてもうれしく思いました。読者に登録してくださいという話をしました。みなさんも、読者になって下さい。読者になると書き込みができます。でも、登録したからと言って特に何もかわりません。ニックネームでも結構です。また、実践や疑問なども書き込んでみてください。一般の方も、コメントいただけると励みになります。よろしくお願いします!

2011年11月5日土曜日

考える足場と対話により、自ら学ぶ子供たち

かけ算の筆算3教時目の授業。
前日の繰り上がらない場合の筆算を足場にして、十の位に繰り上がりがある場合の筆算に挑戦!ステップ(足場)でみんなでやり方を一緒に唱えた後、本時の主問題1では、予習してきたこともあり、「かんたんだ!」という反応。今日は、さらっとやり方を確認して、たくさん問題を解く授業になると予想しました。

ところが、一の位の3×6=18をある子に書かせたところ、たし算の筆算と同じように、かけられる数の十の位の上に小さく「1」と書きました。そのことから、次々に意見や質問が出されました。

「たし算と同じように上に書いたら、1も3倍してしまうんじゃないですか。」

「どうしてかけ算なのに、かけた答えをかけられる数にたすんですか。」

「そこに書くと、答えがちがってきます。」

上に書くという子供は、2名ほどいました。この質問をされて、どう返答してよいかわからない様子だったので、上に書いた子供に計算の続きをさせたところ、ただ上に書いただけで、20とたすことは考えていないようでした。つまり、答えを書くところの上に小さく「1」と書くやり方と同じだということがわかり、みんな納得しました。

この子供の書き方でも、間違えなければ問題はないと思いますが、数字が大きくなったり、小数など複雑になってきた時に間違うことが予想されます。それで、従来通りの書き方をすることになりました。

この子供の発想は、自分にも予想がつかず、戸惑いもありましたが、他の子供たちもいろいろと考えるきっかけになり、繰り上がる時の注意点として受け止めることができました。

このような場合、教師が「ここに書くんだよ」と言えば、数秒で済むことなのですが、子供たちのいろいろなこだわりを納得させるには、こうした対話による学び合いで自分の考えをしっかり伝えることなのだろうと思います。この子供だけでなく、一人一人が考える授業になりました。