2012年7月26日木曜日

わり算の説明は、たし算の説明を足場にして

新規採用のI先生(3年担任)が、校内の新採研で算数の授業をしました。その授業は拝見できませんでしたが、指導者の先生が写真を撮っていましたのでアップしました。

60÷3の考え方を説明しようという授業です。I先生も足場の授業に挑戦しているので、足場を何にしたのか尋ねたところ、6÷3の考え方を足場にしてみたということでした。

そして一人一人に説明を書かせました。


この子供は、図で説明しています。算数では、式や図も説明になります。しかし、この図を言葉で説明できなければなりません。60は10が6つ分であることを示し、6つを3でわったということを示しているのでしょう。つまり、10を一つの単位として考えています。


この考えも10を一つの単位としてとらえている図ですが、「6÷3=2 それに60の0をたして20」という表記が数学的な説明ではありません。これでは、60÷30の説明ができなくなります。



これも60の0を答えにくっつけたという説明の式です。上の子供と同じように、数学的な説明になっていません。



九九にないので、20までのかけ算を3ずつたしていった考え方です。しかし、どんな数でもできる考え方ではありません。(効率的でない)


6÷2ということを足場にしているので、その計算を利用しているが、やはり、「0をとって」「0をたして」という表現が気になります。(これが後々尾を引くので・・)


60は10が6こという点で、かなりいい線いってます。しかし、やはり「0をつけて」という表現になってしまいました。


10を単位に考えてはいますが、それを有効に活用しているとは言えません。「10まいずつ3人に配れば30は残らないと思います」という意見が出そうです。

このようにいろいろな表現があり、45分でこれらを一つ一つ検討する時間的な余裕はありません。しかも、「0をたす」「0をつける」などの説明をどう指導してよいのでしょうか。

【60÷3の説明の例】
まず 6÷3=2 です。
次に 60は10が6こ分なので、60÷3は10が(6÷3)こ分
だから 10の2こ分で20です。


などのように、「まず」「次に」「だから」などの説明のパターンを教えたいと思います。さらに、このような説明をさせるのに有効な足場は何かと考えると、6÷2でよいのだろうか。6÷2を説明させても、10を単位としての考えは出てこないのです。


たとえば、40+20を説明しよう!という足場はどうでしょうか。

まず 40は10が4こ分 
次に 20は10が2こ分
だから、40+20は10が(4+2)こ分なので60です。

という説明を足場にしたら、60÷3を説明するのに「0をつけて」「0をとって」という表現は出てこなくなります。足場の板書をしっかり見せて、主問題の説明を全員に確実に書かせたいものです。このような足場を提示していくと、かけ算や小数、分数でもこの考え方が使えるという数学的な考え方(帰納的・類推的思考)ができるようになります。

2012年7月19日木曜日

ちょっとした足場の工夫が、考える力をつける


4年「式と計算」という単元です。

今日は、工夫してけいさんしようという目標です。例年、ここの学習内容を教えていて気づくのは、計算方法を工夫するより、筆算でやったり前から順々に計算したりする方がずっと簡単だという子供が必ずいます。

前時までに、交換のきまり、分配のきまり、結合のきまりというおなじみの法則を学習してきました。□とか△とか○でわかりやすく公式化しています(黒板左)が、苦手な子供はこれが数値に見えません。わけのわからぬ壁画の文字みたいな感覚なんでしょうね。

そこで、足場を何にするかをずっと考えていました。
 今日の主問題は、
① 78+56+44
② 99×8
③ 25×24

どれを見ても裏側に100という数字が見えるかどうかがカギとなります。この100があるととても簡単に答えが出せるということを足場にしてみようと考えました。

<考えるステップ(足場)>
T;「3桁+2桁をパッと答えを出してもらいます。筆算したい人はどうぞ!」と言った後、問題を画用紙で隠しておき、すぐに答えを言わせました。

『100+52』 計算が苦手な子供も、おやっと言うような目をしましたが、次の瞬間にやりとして
C;「152!」と大きな声。
T;「どうしてすぐに求められたのですか?」
C;「10は、十の位と一の位が0だからそのまま52を足すだけだからです。」
さらにしつこく類似問題。
次は、かけ算で、100×28=?と同様に提示。これもなぜ簡単に求められたかを確認しました。

つまり、足場でたし算やかけ算の中に100を見いだすことができれば、答えは簡単に求められるという認識を深めました。

そこで、 本時は
① 78+56+44
② 99×8
③ 25×24  ということなので、
T;「この中に100が見えませんか?」と発問。
①は容易に全員発見!②は、「99が100だといいんだけどなあ」と誘導していくと、100-1に気づきました。③はちょっと難しかったみたいですが、以前から「25×4=100って覚えておこう」と3年生の時から言っていたのを気づいた子がいました。ところが、「4なんてないよ!」という他の子供の反応。でも、みんなこの時に気づいたのでした。24って、4×6だったということを。そこで、全員納得!

今日の成果は、100があると簡単だということを足場にして、「100が見えるかな?」という発問により、簡単に式を変形していけばよいことに気づいたことです。

今までの自分の授業では、何が何だかわからないうちに、先生が黒板に書いたとおり式を変形してわからないままに授業が終わるという子供もいましたが、この足場を使えば、苦手な子供でも工夫する意味がわかり、きまりを使えばはやく簡単になることをつかむことができました。

ちょっとした足場の工夫が考える力をつけることにつながります。

2012年7月12日木曜日

なぜ(  )は先に計算するのか


先日、教育委員会訪問がありました。その時の授業です。

4年算数「式と計算」(教育出版)第1教時

考える足場を何にしようかと考えました。簡単な数字の2つの式を、1つの式で表すことについて考えさせることを足場にしてみました。

6-2=4   4-3=1      

T;「これを1つの式で表すにはどうしますか?」
 容易に、
6-2-3=1
という式が出ました。これは既習です。ここで、他に方法はないかと尋ねると、(  )を使えば表せそうだという反応。
6-(2+3) 
C;(  )の中は5なので 6-5=1です。
 と答えた子供がいました。 答えは同じになることはわかりましたが、なぜ足し算になるのかを考えてみることにしました。

ここで主問題1(所持金500円、パン230円、ジュース150円を別の店で別々に買った場合)

500-230=270   270-150=120(円)

これを1つの式にしましょうということで、

500-230-150=120という式は容易に出ました。

次の場面(所持金500円、同じ店でパン230円とジュース150円をまとめて買った場合)

ここで、
持っていたお金 -  パンとジュースのねだん  = おつり
という言葉の式をヒントに考えさせました。
(  )を使えばいいという声が上がったので、
T;「(  )を使って1つの式にすると、どうなりますか?」
C1;「500-(230-150)です」
C2;「違います。(  )の中は230+150です。」
 C1の子供は、引き算の問題だから引き算にしたのに・・・という表情。
T;「2つを引く計算なのに、どうして230と150をたすのでしょう?」

2つを引くのに、たし算になることの説明ですが、頭の中では理解できているのになかなか説明がつきません。ペアで話し合ってもなかなかうまい表現が出てこない様子でした。その時、
C3;「パンとジュースをまとめて買ったから足し算です。」
この、「まとめて」という言葉から、足し算であることが理解できたようです。
C4;「考えるステップも(  )の中が足し算になってる!」
と気づいた子供もいました。ステップ(足場)で足し算になることの疑問が解けました。数値だけだとわからなかったけれど、「まとめて」という意味を考えれば納得できるということですね。

次の時間では、(  )を先に計算するというきまりを学習しましたが、この時間の(  )の意味理解をしっかりしておいたおかげで、(  )の中を先に計算することを容易に理解できました。

2012年7月5日木曜日

活用力をつけるために、みんなでつくる足場へ


ちょっと目が悪くなったかなと思ったら、写真がブレていました。(見にくくてごめんなさい!)

今日の問題は、活用力を身につけるための問題ということで、いつもと違って班ごとの話し合いを中心にして考えさせ、一人一人にきちんと説明させたい思いました。もちろん、問題把握はていねいにしながらも、足場を自分たちでつくらせたいと考えました。

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(問)本棚を作るのに、長方形の板3枚、正方形の板4枚、くぎが24本必要で、今持っている材料は、

長方形の板52枚
正方形の板58枚
くぎ315本

この材料で、最大いくつの本棚を作れるかというのが、本時の問題です。


考える足場の指導では、3つの段階があります。

1.先生が与える足場
2.先生といっしょにつくる足場
3.自分たちでつくる足場

単元の最後ということもあり、既習事項も容易に想起できそうだと予想したので、3番目の自分たちでつくる足場をやってみようと思いました。

問題提示の後、考え方をみんなで話し合いました。わりと簡単に3つの式が出ました。

52÷3=17・・・1(長方形の板)
58÷4=14・・・2(正方形の板)
315÷24=13・・・3(くぎ)

この後、グループで答えはいくつなのかを話し合わせました。グループであれば既習を使って解決できるだろうと考えました。班の中で13だろうという声が聞こえてきました。ある班は、
17+14+13=44こ  という考えをしていました。
T「どうして全部たしたの?」
と聞くと、
C「・・・・・・・」

ここで、ハッと思いました。子供たちは、

52÷3=17・・・1(長方形の板)
58÷4=14・・・2(正方形の板)
315÷24=13・・・3(くぎ)      という式や商の意味を理解していないということです。ある男子は、
「長方形は17まいで・・・・」
と言っていました。

もう一度全体で商の意味を確認。長方形だけに着目した場合、本棚を作れるのが17個分だと理解するまでに、けっこう時間がかかりました。

ということがわかれば、答えが13だということを容易に気がつきました。

ところが、説明できずに苦しんでいます。答えは13でいいんだけど、どう言えばよいかがわからないということでしょうね。

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全体の学び合いで、長方形は17個分できますが、正方形とくぎが足りなくなり、正方形は14個分できますが、くぎが足りなくなります。くぎは13個分できますが、長方形も正方形も足りるので答えは13です。
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説明がきちんと出来た人は、数名でした。ここでは、説明の仕方をきちんと指導しました。

なかなか説明できなかった原因は、

1 数値や式が多すぎて、意味把握が困難だった。
2 このような説明の仕方に慣れていない。
3 商の意味を理解できなかった。      などでしょうか。

今回の「みんなでつくる足場」をやってみて、考えたことがいくつかありました。

(1)説明も足場が必要
(2)商の意味を、早いうちに教えておく
(3)図などを用いて考えさせる
(4)類似問題を足場にすることも考えられる(与える足場)

みんなでつくる足場の授業は、単元の終わり頃にふさわしいと思いますが、活用力をつけるために独特なアイディアが必要なものについては、やはり足場があったほうがよいのかもしれませんね。