2022年12月18日日曜日

分数も小数も整数も、すべて「単位のいくつ分」で説明させる

 4年算数「分数のたし算」

3、4年の分数指導をしていると、分数をたしてしまうという誤答が見受けられます。また、正答であっても、
「なんで分母は足さないの?」
と問うと、
「分子だけ足して分母は足してはいけないから。」
という子どもたちの反応が見られます。

分数指導で必ず心がけたいことは、「単位分数の何個分」という説明をさせることです。10年以上前に、石田教授から教えていただいた「考える足場」を与えると、分母をたしてしまうという誤答がなくなり、その理由をしっかりと説明できるようになります。

そのために、低学年の
200+300=500
という計算も、「100のいくつ分」という考えで説明させることが大切です。

小数でも、

0.2+0.3=0.5の説明
まず、0.2は0.1が2個分
次に、0.3は0.1が3個分
だから、0.2+0.3は0.1が(2+3)個分で0.5

というように、単位小数0.1が何個分という説明をさせます。

3、4年の分数のたし算では、小数や整数のこの考え方を考える足場にして説明させます。小数を足場にして説明させると、分数でも分母を足すという誤答がなくなります。

これが高学年で分数のかけ算になっても、整数に帰着した考え方で説明できます。つまり、小学校の算数での十進法は、整数に帰着して指導していることを指導者がつかんでいることが大切です。
(以下、11年前実践した考える足場の記事です)




 

2022年4月30日土曜日

型を示す







 新学期が始まり1か月が過ぎました。今年度は4年生の担任ということでスタートしました。再任用2年目ですが、若者に負けないようにがんばります。

参観日の時に、「かさをつくろう」という小数のひき算の発展的な授業をしました。石田淳一教授の著書にあるものを自分なりにアレンジしてやってみました。

2つのコップを使ってかさをつくるという内容です。なみなみと入れた水を別のコップになみなみ入れると、元のコップに水が残る。つまり、ひき算した答えのかさだけ残るというものです。

これを論理的に表現させるというねらいです。説明の仕方はいろいろありますが、「まず」「次に」「だから」の型で表現させたいと考えました。でも、いきなりこの型で説明しなさいと言ってもなかなか難しいと思い、まず全体で学び合ってこの表現を完成させました。つまり、全体で解決したことを考える足場にするということです。

そしていよいよ主問題2をグループ学習させます。Tの文字にするので、「T字グループ」と呼んでいます。主問題1でやった表現を足場にしているので、どのグループも参考にしながら解いていました。

あるグループだけ、逆の発想をしていました。小さいコップから移す方法です。0.3Lなので、0.2Lと0.1Lでつくっていました。全体の話し合いで、0.1Lは半分まで水を入れるという説明でしたが、ちょうど半分というのは無理だということになりました。数学的には目盛りがないコップで半分という表現は、曖昧な言葉になります。

全体の話し合いのあとは、全員がこの表現で説明することができました。

今回の授業では、主問題1を全体で解決し、それを考える足場にして学び合うというものです。いろいろな表現をグループに出させて学び合うというやり方もありますが、論理的な説明をさせる場合は、型を示して教えなければなりません。時間ばかりかかり身につかない授業よりも、効率的で思考力、表現力が身につく授業だと思います。



2022年1月22日土曜日

説明する力を付けさせる算数授業とは?

 先月、市内M小学校の授業研究会にお呼びいただきました。今回は、5年生の三角形の面積を求める問題です。三角形の求積は、過去何度も研究授業でやりましたが、いつも話題になることが、三角形と平行四辺形のどちらを先にやるかということです。教科書によって違うのですが、

◯三角形を先に扱うメリット

 多角形の基本は三角形であるので、三角形を理解することで多角形に派生していくという多角形の本質に迫ることができる。啓林館はずっとこの考えで通しています。

◯平行四辺形を先に扱うメリット

 三角形は平行四辺形の半分という考えからの公式化が容易になり、低位の子どもにも指導しやすい。

 今回の授業では、後者の平行四辺形からの流れでした。5年生の求積では、4年生の「1㎠が何個分」という概念から、既習の図形に変形すれば未習の図形の求積ができるという数学的な考えを養うことをねらいにしています。どちらを先に扱うのかは、子どもたちの現状と指導者の考えによります。


この授業のポイントは、前時の平行四辺形の練習問題の後に、すでに三角形の求積方法の見通しをもたせ、家庭学習で予習させるということです。そうすれば、本時での自力解決の時間が必要なくなり、すぐに話し合いに入れるというメリットがあります。

単元構成の段階で計画的にやる必要がありますが、授業が効率的に行えるということと、授業内容の定着につながるものだと感じました。ずっと前から、「算数日記」という算数の授業の流れを振り返らせるという実践をしてきましたが、先取りをしてくるというやり方もありです。

結果、自分の考えと同じものに自分のマグネットネームを貼るなど、一人一人がしっかりと考えをもって臨んでいました。


グループで学び合いましたが、考え方別のグループ学習でした。自分も過去実践したことがありました。

◯同質の考え方グループのメリットは、メンバーが同じ考えなので、すぐに確認しながら考えを深めることができる。

△デメリットは、その都度人数調整する必要がある。

◯異質の考え方グループのメリットは、どの考え方が効率的で数学的なのかを比較検討することができる。

△デメリットは、強く主張する子どもの考えに引っ張られ、弱い子どもの考えが潰れることがある。

というわけで、これも授業者の考えやクラスの実態に合わせてやり方を変えてみることです。今回の授業での一番のポイントは、説明の仕方を教えるということだと思います。授業者の先生は、以下のようなポイントを事前に与えていました。

①どのようにして何の図形に変形したのか。

②どんな式になったか。

③使った公式

④どのように考えて面積を求めたのか。

ということです。写真のように、項目に沿って説明していました。このようなポイントを示さないと、式だけ書いていて言葉で説明できないということがあります。ですから、このようなポイントを与えるということが有効だったということです。

この日の事後研究会では、私の考えを以下のように述べさせてもらいました。

1 前時の終わりに本時の見通しをするという点について、意識付け、意欲付けという点で家庭学習で自力解決させることは、定着につながっている。

2 「説明する」について、4つの視点を与えることは、説明の仕方を理解させ、論理的な思考につながっていく。さらに、今回の授業の評価も容易になってくる。ちなみに自分は、「まず」「次に」「だから」という言葉を使って説明させてきた。

3 考え方別のグループ学習について(前述の通りの内容)また、図形の説明の場合は、A,B,C…を用いて説明させたい。

4 全体の学び合いについて、倍積変形などの新しい考え方を等積変形との違いを浮き彫りにしながら「÷2」に着目させて話し合わせ、考えを広げたり深めたりできる話し合いをさせたい。

5 全体の話し合いの後、自分が選んだ方法について、一人一人にしっかりと説明を書かせて評価にしたい。

最後に、11月に届いた教育事務所からの文書と関連付けて話しました。

〜文書より抜粋〜

<説明させる授業で考えておきたいところ>

・どんな力をつけたいのか。必要な数学的な見方・考え方は?

・どんな説明を求めているのか。「事実」?「方法』?「理由」?

・説明に何を含めればいいのか。正答の条件は?

・どんな説明を書かせたいのか。「説明」のモデルを持っているか?

 今回は、説明のモデルを用いて説明のイメージを持たせながら、つけたい力を明確にしているという授業でした。算数では、自分の考えを、簡潔・明瞭・的確に表現することを重視し、これからの社会を生き抜く上で大切な資質・能力であると捉えています。「説明させる」ことに力を向けての授業を仕組みたいものです。