2019年6月30日日曜日

見通しをどこまでもたせるか









算数の授業研究会がありました。

6年算数「分数÷分数」

教科書の問題は、ペンキと面積から分数÷分数の立式をさせて解かせるというものでしたが、教科書の流れでは、面積図に持っていきたいという意図があるように思えました。指導要領では、わからなない子どもへは、面積図などを用いて視覚でわかるようにするなどど書かれているが、それは全くの逆で、面積図は算数が得意な子どもにしかなかなか理解できない。というわけで、棒の重さと長さから、単位量あたりの重さを求める問題にしました。

これにしたのは、鉄の棒は直線のイメージなので線分図が捉えやすいというよさがあるからです。



立式は、前時で単位分数を扱いながら、同じ文章題でやったので容易に出されました。この時、
T「どうしてこの式になったの?」
と問い返しました。
C「重さ÷長さ=1mあたりの重さになるからです」

事後研での指導主事が、この問い返しを高く評価していました。式の意味を考えさせるということがとても大切だということですね。

さらに見通しでは、線分図とわる数を整数にするという方法。線分図という見通しが出されたので、全員に線分図をかかせました。前時では、単位分数だったので、3倍するだけでしたが、今回は2で割ってから3倍するという2段階になるので、見通しはそこまで全体で確認しないといけません。

しかし、そこまで見通しを持っても、A班しかやっていませんでした。いかに2段階思考は難しいかということですね。ですから、もっと全体でできるまで押した方が良かったのかもしれません。

写真で見るとわかる通り、わる数の分母をかける方法と、逆数をかける方法に分かれました。全体の学び合いでは、どの方法がはかせどんかと問いました。どんな分数でも簡単にできる方法は、逆数という反応でした。計算が一回で済むからですね。

しかし、ここでもう一つ押さえるべきだったのは共通点です。逆数も、線分図も全て2でわって3倍しているということです。そこに気付かせられたら算数のよさを感じられたでしょう。


一人一人が説明できるように、全体で逆数の方法を再確認しました。

事後の研究会では、以下のようなご意見をいただきました。ご覧ください。


校内研では、どのようにして考えを持たせての学び合いをさせるかということが話題の中心になります。算数では、見通しでいかに考えを持たせるかということになります。このような難しい問題の場合には、まず全体で問題1を解いてみるということが有効であると思います。それが一人一人に考えを持たせるということになります。


2019年6月9日日曜日

たて、横の長さが分数の時も、「たて×横」の公式が成り立つのか

6年分数のかけ算の授業です。

たて、横の長さが分数でも、たて×横という長方形の面積を求める公式を使ってもよいのかを説明させたいと思いました。たぶん、下の図を見せただけで、たて×横で求められますということになり、答えが出てすぐに終わってしまう授業をしている人もいるのではないかと思います。

5年生の時に、たて、横の長さが小数の時の長方形の求積問題がありました。その時も、小数×小数ということで、何の疑問ももたない人がほとんどでした。その理由は、長方形の面積がなぜ「たて×横」の長さで求められるのかを忘れてしまっているからです。もともとは、1㎠が何個あるかで面積を求めていました。だから、5年生の小数の場合、1㎠よりさらに小さい単位が必要になりました。今回は分数でも成り立つか!という課題です。

まずは、たて×横と予想通りの意見が出たので、分数のかけ算をさせました。この答えが正しいかどうかをどうやって説明させるかがこの授業の最も重要なところですね。
しかし、この問題の説明の見通しをもてる子どもは、予想通りいませんでした。そこで、下の図を考える足場として与えてみました。1㎡をたて、横の分数で区切りの線を入れてみました。そうすることで、赤い部分の小さい長方形の面積がわかればよいということになり、ここからグループ学習に入りました。


下のF班は、1/3×1/5=1/15として求めていました。それが8個分。







下のB班も同じ。

しかし、ここで考えなくてはいけないのが、1/3×1/5と立式している段階で、たて、横の長さが分数の時もたて×横の公式を使ってしまっているわけです。全体の話し合いでは、この式についての説明が必要であることを確認しました。




下のG班。3と5に区切られているから、全体が15等分されていることに気づいていました。





E班も同じで、1㎡を15に分けたうちの1つ分として考えていて、15は3×5というところまできました。では、8個分というのはと問うと、2×4であることを容易に理解できました。




そして、学び合いをつないでいった結果、下のようにまとまりました。それが、最初にやった分数×分数と同じ計算になりました。






かなりまどろっこしい内容かもしれませんが、算数では、整数から小数、分数というように数がどんどん複雑になり、これが数学では文字になったり、実数・虚数などと発展していきます。小学校の段階で、ただ単に計算の名人を育てるだけでなく、「小数や分数でも整数の時の性質が成り立つのだろうか」という疑問をもち、追究していく子どもを育てるべきだと思います。




「授業展開モデルA」で解き方を説明させる


4年生の算数の授業を見せていただこうと担任に声をかけたら、自習になるとのことだったので、代わりに自分が授業を進めることになりました。

学び合いの授業をしていると、「まず自分の考えをもたせてから学び合わせるべきだ」と言う人がいます。確かに、自分の考えをもって話し合わせることが理想です。考えももたずに話し合いに参加すると、人の意見に頼ってしまい自分で考えようとしなくなるということもあると思います。しかし、過去の課題解決型の授業では、見通しをもてなくて教師の支援待ちの子どもが必ず数名いました。そのために時間を費やしてしまうという弊害から、子ども同士の学び合いに力を入れてきました。「考えをもたせる」ことと「学び合い」は、相反する立場のように言われてきましたが、そうではなくて石田教授が提案する、「授業モデルA、B、C」を実践することで、考えをもたせる学び合いが成立します。今回は、授業モデルAの実践例です。


35×27=945の答えを使って、3500×2700と35万×27万の答えを求めさせる問題です。そこで、石田淳一教授の「学び合いの算数授業「35+10」分モデル」(明治図書)で提案されている「授業モデルA」でやってみようと思いました。

問題1(全体)→  問題2(グループ) → まとめ → 習熟・振り返り

という指導過程です。

まず問題1を全体で話し合います。35を3500にすると答えは94500になることは容易につかめましたが、なぜそうなるのかを考えさせました。当然、100倍下から答えも100倍ということですが、この100倍の意味も問いました。「100倍するということは位が2つ上がる」ということを押させました。27と2700についても同じことが言えます。そうすると説明が簡単になります。つまり、位が2つ上がり、さらに2つ上がるから答えは位が4つ上がるということで、10000倍になることを説明させました。これを板書に明記しました。それは、問題2で「万×万」の問題を説明させるためです。子どもたちは、問題1の説明の仕方を見ながら、問題2でも同じように説明していました。もちろん、一人でできない子供もいるので個別に支援します。そしてグループごとにホワイトボードに書かせてから発表させました。どのグループも問題1の説明の仕方を取り入れていました。

このように、問題1を全体解決することが、問題2を解くための考える足場になるということです。つまり、問題1の解き方を共有することで、問題2を解くための見通しや考えをもつことにつながるのです。